ライカで高画素センサーに耐えられるほどピントは合うか?

ライカには、レンジファインダーという距離計が付いています。
その距離計の精度的な問題で、ライカのレンズは135ミリまでしか出していません。ライカの基準では、135ミリより長い望遠レンズでは精度を出せないのです。

中央でしかピントを合わせられない距離計のコサイン誤差

距離計式のカメラでは中央でしかピントを合わせられない。今時、画面の中央でしか。中央でないものにピントを合わせるには、カメラの画面を振って画面の中央に写したいものを持ってきてピントを合わせ、そして構図を決めるためにその振った画面をずらす。そうするとピント位置が実はズレてしまうのです。振った分のその円の部分だけズレる、この差を「コサイン誤差」といいます。

通常、普通のF2.8などのレンズだったらあまり問題にならないのですが、最近のライカのレンズの中にはF1とかF0.95とかのピントが合う範囲が非常に薄いレンズがあります。そういうレンズでカメラをを振ってピントを合わせて画面の端のほうに写したい被写体を移動すると、この誤差を無視できなくなるのです。

だからライカでF0.95とかF1とかいうレンズは、ピント精度をちゃんと出せないのです。距離計ではピントをちゃんと合わせられないのではないでしょうか。
最近はそういうレンズを使う人たちがいるのですけどね。
F2.8とかF2とか、そういうレンズは被写界深度がちょっと深いので、少しぐらいズレてもピント内に収まります。

ピントの合う範囲とは30分の1ミリ

被写界深度の中でピントの合う範囲というのは、次のような基準があります。
ポストカード、はがきサイズぐらいに写真を伸ばした時にピントのボケ、つまりピントというのは光が当たって1点のところに来るのですが、ピントがズレると点が点じゃなくてだんだん丸くボケて大きく丸くなっていきます。それが35ミリ版のカメラだったらそのボケは30分の1ミリぐらいでいいんじゃないか、ということになっています。昔は写真をあまり大きく伸ばすことがなかったからです。

でも最近はA3ノビとかに伸ばすこともあります。A3ノビだと長辺が48.3センチですが、ポストカードの約3倍あるわけです。ポストカードの時にピンボケがわからないのをA3ノビに伸ばしてみたら、ピンボケがわかるかもしれない。

ということは、3倍大きくしているのですから実は3倍精度を持たなくてはいけないわけです。30分の1がだいたい100分の1ぐらいになります。そうすると、ライカの距離計でやっているのが135ミリのレンズぐらいまでしか精度を出せないと当時言われているのに、実際には今はものすごく大きく伸ばすので、135ミリのレンズで撮ったものをA3ノビなどでプリントした時に、ピントの精度を維持できるのでしょうか?

そして最初に言った、カメラを振った場合にF1とかF0.95とかの明るいレンズで、コサイン誤差が出るその差をちゃんとカバーできるのか?

今のミラーレスカメラは、センサー上でほとんど全画面ピントを合わせられるので、センサー上でどこでも測れるので、そういうピントの精度の問題はないのです。

今のライカの高画素なセンサーとピント

ライカのカメラは、今はセンサーをどんどん高画素にしています。どんどん大きく伸ばせる方に。どんどん伸ばせるけれど、もうそのピント精度は追いついていないでしょう。ライカの売りになっている距離計でピント合わせする方式では。
距離計の基線長は数センチあるのですが、シビアなピント精度を要求される今の高画素では、その基線長でそんなに精度を高く出せないと思います。

ライカの距離計は昔のまま、というか、それは物理的な問題なのです。精度をいくら高くしても、この数センチの基線長のところで二重像を合致させるから、人間の目がこのズレの大きさでピントを合わせるのだから、人間の目の性能が上がるわけではないのです。距離計の基線長を長くすればその分精度は出せますが。

二重像合致式のピント合わせが、今の超高画素センサーを使って大きい写真までとれるような時代に対応できないのではないかと私は思います。

こぼれ話

ちなみに、戦艦大和の大砲の距離計、すなわち「測距儀(そっきょぎ)」は、基線長が約15メートルありました。ニコン製です。
ニコンは昔は軍需産業でした。
戦艦大和の大砲は40㎞飛びました。